ベッドサイドの3風景(カレーライス)
最近、医食同源、薬食同源、薬膳という言葉をよく耳にします。私も以前、中国を旅行
した時、北京と上海の薬膳レストランに行ったことがあります。
そこでは、中国医学を学んだ医師が問診をし、舌を診て、脈を診て証をたて(診断をし)、
その人にあった食事を処方してくれます。
鍼灸と薬膳は同じ診断法ですが、治療方法が違うのです。鍼灸はハリと灸を使っ
てツボを刺激して身体の不調を調え、薬膳は食事によって身体を癒します。
私の場合、旅の疲れで内臓が弱っているということで、それにあった料理を作ってもらい
ました。
私たちは日常的に中医師の処方する薬膳を食べることはできません。しかし、私たちは
卓上の料理が薬膳であることを知らずに食事していることがよくあるのです。
その一つが日本でカレーと呼ばれている料理です。
みなさんはカレーのスパイスと漢方薬の生薬が同じだということを御存知ですか?
スパイスは単味でも効果がありますが、数種を適切にブレンドすることにより、一層人体に
良い効果をもたらします。
カレーに使われるスパイスの生薬名と効能を書いてみましょう。
クローブは生薬名を丁子といい、殺菌作用があり、肝臓の不調時に用います。
以下、シナモンは肉桂(消化、血液循環の促進、虚弱体質の改善)、コリアンダーは胡菜
(消化促進、口臭防止、腸内ガスの蓄積を減少)、クミンは馬芹(消化促進、しゃっくり、
げっぷの緩和)、ナツメグは肉豆寇(消化促進)、ターメリックが鬱金(健胃作用)、フェン
ネルは茴香(脂肪の消化の補助、利尿作用、腸内ガスの蓄積を減少)です。
どれもよく耳にする生薬でしょう?
さらに、唐辛子は血液循環や消化の促進作用だけでなく、ビタミンCが豊富で体内の脂肪
を燃焼させ、肥満防止に(ただし辛みの主成分であるカプサイシンは動物実験で人為的に局所
の炎症を起こすのに使われるもので、唐辛子の食べ過ぎは胃腸炎を起こします。ほどほどに)。
生姜は保温、健胃作用、乗り物酔いに、ニンニクは強力は抗生物質的作用とともに、
コレステロール、血圧、血液の粘度を下げるといった働きがあります。
上記したスパイスはほんの一部ですが、カレーを作るときだけではなく、「今日は脂っ
こい肉料理だからフェンネルを使いましょう」とか「最近ストレスのせいかガスが溜まる
な〜。フェンネルとコリアンダーを使ってエスニックな魚料理でも作るか!」などと体調
に合わせて利用できると良いですね。
中国最古の薬学書「神農本草経」には365品目の薬物が記載され、それを上薬、中薬、
下薬に分類しています。
「上薬は120種で養命を主とし、天に相当する。これは無毒で長期に服用しても害が無い。
「中薬」は120種で性を養うことを主とし、人に相当する。これは用い方によって無毒
にも有毒にもなるので慎重に用いること。
「下薬」は125種で病を治すことを主とし、地に相当する。これは毒が多いので長く
服用してはいけない」とあります。
下薬は即効性はあるが、長期の服用では副作用があり、危険と当時の中国人は考えてい
たようです。これは現在でもそのまま通用する考えといえましょう。
本年1月の会報にも書きましたが、東洋医学の極意、未病治(未だ病まざるを治す)は
老子の教え、「大事は小事のうちになせ」からきています。病気はその前兆(こり、冷え、
疲れやすさなど)が現れたときに治療してしまえば、大病には至らないということです。
病んでから薬を飲むのではなく、病まない身体を食事によってつくるのが最善です。
バランスのとれた食事こそ上薬といえましょう。体調を崩した時、すぐに薬に頼るのではなく、
休養をとり、食べ物で治しましょう。
冷えたビールの飲みすぎで疲れた胃は胃薬でなく、生薬たっぷりのカレーで治してはいかがで
すか?
![]()
![]()
![]()