9、健康保険による鍼灸治療ついて
数年前、私自身腰痛で辛かった時がありました。治療は中腰で行うので、
どうしても疲労がたまると腰がいたむのです。そこで、近所の鍼灸整骨院
に行ってみました。保険で行う鍼灸とはどのようなものなのか知りたいと
いうこともありました。もっともそこは、整骨は保険で鍼灸は実費でした
が。
さて治療です。
先生「どうなさいましたか?」
私「腰が痛いので、診ていただきたいのですが。」
先生「どこが痛いですか?」
私「ここらへんです(手で示す)。」
先生「では、このベッドにうつ伏せで寝てください。」
私「はい。」
先生「マッサージをします。」
私「はあ?(問診も理学検査もしないで、いきなり始めちゃうの?)」
そして、10分後。
先生「鍼を打ちます。どこが痛いですか?」
私「ここらへんです(手で示す)。」
トントン、トントン、トントン、トントン、トントン、トントン、
トントン、トントン、トントン、トントン(先生が鍼を打っている音)
そして、置鍼10本(鍼をさして留置する方法)。
私「(ンッ〜。ツボに当たってないな・・・。)」
10分後、抜鍼(鍼を抜くこと)。
先生「じゃあ、起きてください。今日はこれで終わりです。」
私「あの・・・。まだ、痛みが取れていないのですが。」
先生「また、明日、来てください
。」
私「・・・・・・・。」
マッサージ10分:保険で500円。鍼治療10分:実費で2000円。
計2500円を払ったその足で別の鍼灸院に行ったことは言うまでもありま
せん。
私が行った所がたまたま不運にもお粗末だったのでしょう。
鍼灸整骨院でも実費で鍼灸をやるところはもちろん良い所もたくさん
あると思います。
ただ、保険で鍼灸治療を受ける場合は常に上記のような扱いを覚悟し
ておく必要があります。
鍼灸を保険で受けたいと思っている方のために少し説明します。鍼灸
の場合、保険が使えるのは頚肩腕症候群、五十肩、リウマチ、腰痛、
神経痛、頚椎捻挫の6疾患のみで、例え首と腰、膝が痛かったとしても
首なら首だけ、腰なら腰しか保険支払いの対象にはなりません。
また、医師に同意書あるいは診断書をもらって、鍼灸治療を始めた日
から3ヶ月で治療中の疾患には保険が使えなくなります。もう一度医師に
同意書あるいは診断書を書いてもらった場合に限り、さらに3ヶ月の治療
延長が可能となります。
そして、最初の月は15回、2ヶ月目から6ヶ月までは10回という治療の
回数制限もあります。
保険で鍼灸を受ける場合、最も馬鹿げたことは上記しましたように医
師の同意書あるいは診断書をもらわなければ保険が使えないということ
です。
つまり、今現在、痛いから鍼灸で楽になりたいと来院した患者さんに、
鍼灸師は「病院に行って診断書か同意書をもらってきて下さい。」と言
わなければなりません。
患者さんからすれば「痛みを楽にしてもらうために来たのに、この痛
い体で、また病院に行けというのか?」と感じるでしょうが、法律がそ
うなっているので、鍼灸師を責めてもしょうがないのです。
痛い体を引きずってでも病院に行き、同意書か診断書をとって保険で
鍼灸をやりたいと希望する患者さんに立ちふさがる最後の難関は医者で
す。法的には患者さんに同意書か診断書を要求されたら書かなければい
けないのに、それが拒否されることが往々にしてあります。
なぜでしょう?それは鍼灸を受けるために必要な同意書、診断書を書
くということは、「私の手には負えないので鍼灸で治療をお願いします。」
という意味だからです。鍼灸に造詣が深い医師を除いて、普通の医者が
書くと思いますか?
当院にも何人かの方が「どうしても保険で」ということで近くのC病
院やK整形外科に送ったことがありましたが、「けんもほろろに拒否さ
れた」と怒って帰ってきました。
このように鍼灸に保険が使えるといっても、様々な制度的不備から「保
険で鍼灸」というのが画餅(絵に描いた餅=役に立たないもの)であるこ
とがおわかりでしょう。そして、誰がこんな保険システムにして患者さん
や鍼灸師に困難を強いているのか、賢明な読者のみなさんにはおわかりの
ことと思います。
このようなこともあり、当院では現在健康保険での治療は一切行ってお
りません(交通事故は自賠責保険での治療が可能です)。
そのかわり、一回一回の治療は真剣ですよ!なにせ、実費なだけに初回
で効果が感じられなければ、次回の御来院はありませんから(笑)。
冗談はともかく、上記しましたように、保険では多部位にわたる症状が
あっても1部位しか治療されません。しかし、自由診療の場合は時間や治
療効果を勘案して、多部位を同時に治療していきます。
ですから、自由診療のほうが結局は短期間で効果が現れ、時間とお金の
節約になるのです。
何よりも大切なご自分の体。長期的な視野にたって治療は選んだほうが
良いでしょう。
今回は保険による鍼灸治療について書いてみました。